メカニズム

細胞間質液と血液の浸透圧バランスが崩れ、細胞組織に水分が溜まって腫れるものを浮腫(むくみ)と言います。

浮腫発症のメカニズムとしては浸透圧の低下、血圧上昇(静脈やリンパ管の閉塞)、血管透過性の亢進などが挙げられます。

浮腫に関連して、リンパというワードが頻繁に出てきますが、リンパ系は、リンパ管とリンパ節から構成され、その内部にリンパ液が流れているという仕組みになっています。末梢の毛細血管(動脈のはし)から滲み出てきた組織液の90%は静脈に再吸収され、残りの10%がリンパ管に吸収され、リンパ液となります。

その後、リンパ液はリンパ管を上行し、徐々に太くなりながら左右の静脈角に合流する事で、リンパ液は静脈に混じり合っていきます。

分類

全身性浮腫、局所性浮腫に分類されます。
全身性浮腫は、うっ血性心不全、心タンポナーデ、肺高血圧症、腎臓病などの浸透圧の低下によるもの、肝硬変やネフローゼ症候群など低蛋白血症によるもの、アレルギーによるものなどがあります。
局所性浮腫は、リンパ浮腫、感染症の他、長時間の同一姿勢や塩分、お酒の飲みすぎ、過労・ストレスが原因で起こります。

全身性 局所性
種類 ・うっ血性心不全
・腎疾患(ネフローゼ・急性腎炎)
・肝硬変
・甲状腺機能低下症
・ダイエット・栄養失調など
・薬剤性浮腫
・特発性浮腫(原因不明の意)
・静脈性浮腫(下肢静脈瘤・深部静脈血栓症)
・リンパ浮腫
・麻痺性浮腫
・炎症性疾患
心性 腎性 局所性 静脈性 リンパ性
特徴 ・夕方に強い
・立位では下肢、臥位では腰背部に強い
・急性糸球体腎炎では眼瞼など顔面に強い
・ネフローゼ症候群では全身に強い浮腫をきたす
・腹水を伴うことが多い ・緊満性が強い。痛みを伴う ・重量感がある。
・リンパ管炎を起こさなければ痛みはない
その他所見 ・労作時や夜間の呼吸困難
・起座呼吸
・肝肥大など鬱血性心不全症状
・静脈の怒張
・倦怠感
・食欲不振
・尿蛋白(糸球体腎炎は中程度、ネフローゼ症候群では高度)
・倦怠感
・痩せ
・黄疸などの肝障害の症状
・脾腫やメズーサの頭などの門脈圧亢進に伴う所見
・静脈の怒張
・色素沈着
・潰瘍の形成
・皮膚炎
・徐々に悪化
・慢性化すると象皮症をきたす
・リンパ管炎

一般的治療法・リハビリ

原因疾患がある場合にはその治療が行われます。
局所性の場合は、適度な運動やマッサージなどが推奨されます。

徒手的リンパドレナージュ

皮下(リンパ管は皮下リンパと深リンパがあります)のリンパ管に沿うような感覚で、末梢〜中枢側へ擦る又は、軽く圧迫するように負荷を加えながらリンパ液をリンパ節内に排泄させていきます。

運動療法

深リンパへのアプローチとして筋ポンプを利用した運動療法を行います。踵上げ運動やエアロバイクなどを実施して、筋や関節のポンプ作用で深リンパの流れを促進します。さらに、腹式呼吸の獲得や円背の矯正で、心肺機能を改善し、リンパ液が心臓にもをる働きを助けることも可能です。

弾性ストッキングの着用

外部からの圧迫刺激によってリンパ液の流れを促進する方法です。主に、慢性期の浮腫治療に用いられ、二次的な障害の予防に使用されます。弾性ストッキングの圧は30〜40mmHgが理想的です。

水分コントロール

過剰な水分摂取により、組織液そのものの量が増え、吸収力を超えている場合があります。ダイエットのためにと、毎日数ℓもの水を飲んだり、腎機能が低下している場合には、特に注意が必要です。
また、飲酒のしすぎや塩分過多も多量の水分を欲する原因となりますので、摂取量を考えましょう。

参考文献