日本人の3割が…

「痔」とは肛門の病気の総称です。

1988年の古いものではありますが、日本人の成人男女の約36%の方が痔に悩まされているという調査結果があります。また、別のデータとして、ドイツの解剖学者が成人遺体を解剖したところ、約70%の人が痔核(いぼ痔)をもっていたという驚くべきデータもあります。

世界的に診ても決して珍しい病気ではないということが分かっていただけましたでしょうか?痔の発生率は日本と海外を比べてもさほど変わりません。しかし、日本では以下のような理由から早期発見が難しく、重症化率が上がり、必然的に手術率も高くなっています。

  • 診察を受けるのが恥ずかしい
  • 痔で死ぬこともないから受診がめんどうだ
  • 医者に行くとすぐに手術をされる、手術が怖い
  • 手術で何週間も入院しなくてはならない
  • 痔は手術をしても再発する

男女共に、半数以上の方は痔核(いぼ痔)で、男性では痔瘻が2位、女性ではきれ痔が2位となっています。

原因と症状

痔を発症している場合でも、痛みを感じない場合があります。そもそも、痛みを感じるのは知覚神経が痛みを感じ取っているためです。そのため、知覚神経が分布していない歯状線より上部の直腸部分に発生する内痔核では痛みを感じないのです。,
※脱肛の場合は痛みを伴います。

痔は、大きく「痔核(いぼ痔)」、「裂肛(きれ痔)」、「 痔瘻じろう(あな痔)」の3種類に分けられます。

①痔核(いぼ痔)
原因

いきみや肛門部への過度の刺激、負担により、直腸や肛門付近の毛細血管がうっ血し、部分的に腫れることが原因。

症状
イボのような腫れができる。
【内痔核】
軽度:排便時の出血のみで無痛
悪化:イボが肛門外に出るようになり(脱肛)、痛む
【外痔核】
出血は少ないが強い痛みを伴う
②裂肛(きれ痔)
原因

硬くなった便を排泄する時に肛門の外壁を傷つけることが原因。

症状
排便時や排便後に出血、ズキズキした痛みがある。痛みのために便意を我慢すると、ますます便が硬くなり悪循環に陥りやすい。
※どちらも悪化要因となる。
[便秘]: 無理ないきみ
[下痢]: 傷の治りが遅れる
③痔瘻じろう(あな痔)
原因

歯状線のくぼみ部分(肛門腺)に 細菌が入り、炎症化膿して中で膿がたまることが原因。

症状
・常時肛門に腫れや痛み
・臀部の熱感
・発熱(38〜39°C)
・膿が出ている

膿が出て一時的に症状が落ち着いた後も、膿の通り道(トンネル) が出来ているため化膿を繰り返す。

※治療には手術が必要になるため、早めの受診が必要。
上記では主に、排便時のいきみを原因としたものとされていますが、妊娠中期頃〜出産前後の女性は特に痔の発生率が高くなります。海外のデータでは、この時期の女性のうち、約85%の方が痔を発症しているという報告もあります。妊娠時には、大きくなった子宮によって直腸や肛門部分が圧迫され、血管がうっ血→痔核(いぼ痔)が発生しやすくなるのです。痔を発症した方の95%はいぼ痔であることもわかっています。

予防法

01.皮膚の免疫・防御機能の向上

おしりはていねいに拭く

過度に洗浄・こすり洗いは、皮膚にダメージを与え乾燥や荒れに繋がり皮膚のバリア機能を低下させます。基本的には、紙を押しあてるように優しく拭くだけで十分ですが、便の状態や年齢などによっては、温水洗浄機能などを使うとよいです。

「温水洗浄便座症候群」

温水洗浄便座機能を浣腸的に使うことで、刺激がないと便が出にくくなったりすることをいいます。洗いすぎによる皮膚炎を起こすこともあるため、温水洗浄便座の使用方法や回数にも注意しましょう。

座りっぱなしにならないようにする

長時間の座りっぱなしは、肛門まわりが蒸れ、バリア機能の低下につながります。蒸れにいより、皮膚の角質層が剥がれやすくなり、保湿機能の低下しまうため、乾燥に繋がってしまいます。

02.胃腸の機能・環境の改善

便秘や下痢は、痔の大きな原因の1つです。便秘による硬い便は、肛門を傷つけてしまいます。下痢も肛門を刺激したり、細菌感染を起こしやすくしたりします。

食生活を見直す

ヨーグルトや納豆などの善玉菌そのものや、善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維をとるなど、腸内の善玉菌を増やす食生活を意識しましょう。また、辛い食べもの、アルコールなどは腸を刺激するため、控えるようにしましょう。

水分を多めにとる

腸の内容物の水分が腸壁から吸収されるため、水分は不足は、固い便の原因となります。成人で約2L/日の水分をとるよう心がけましょう。

無理なダイエットはしない

食事量が少く便量が増えないと、なかなか便意が起こらず、便秘になりやすくなります。栄養バランスがよい食事を心がけ、食物繊維もしっかりとりましょう。

適度な運動

ウォーキングやストレッチなどの軽い運動も、腸の動きを活性化させます。

きちんと睡眠をとる

睡眠時や、リラックス時に働く副交感神経が消化管の動きを活発にします。

ストレスをためない

精神的ストレスにより自律神経が乱れ、腸の働きが悪くなることもあります。

03. 血液循環の改善

肛門まわりの血流不善は、痔の発生、悪化の原因のひとつと言われています。

同じ姿勢を続けない

座りっぱなし、立ちっぱなしなど同じ姿勢を続けていると、肛門がうっ血してしまいがちです。休憩時間に軽い体操をするなど、適度に体を動かしましょう。

お風呂は湯船にゆっくりつかる

入浴は、痔の自己予防法として効果的なものの1つです。清潔に保たれるだけでなく、温めることで 肛門のうっ血が改善されます。シャワーだけではなく半身浴でもいいので、ぬるめのお湯で湯船にゆっくり入りましょう。

トイレは3~5分が目安

排便は 3~5 分程度とし、出ないときは無理せず切り上げましょう。残便感がある場合も同様で、無理に出しきろうとしてはいけません。長時間、強くいきむと肛門に負担がかかり、うっ血や出血につながります。排便は、便意をもよおしたときに無理なくするようにしましょう。

対策

突然の痛み

からだの力を抜き、安静にします。痛みでからだが硬直すると肛門にも力が入り、痛みが強くなります。

01.まずは安静に

布団などの上で、膝を軽く曲げ横向きに寝ます。全身の力を抜き、お尻に力を入れないようにリラックスします。しばらくして落ち着いたら「02. 痛みをやわらげる」に移行します。

02.痛みをやわらげる

まず、自分の症状に合ったケア方法を実践するため、以下の表を参考に、痛みが痔核(いぼ痔)や裂肛(きれ痔)によるものなのか、肛門周囲膿瘍(のうよう)や痔ろうによるものなのか確認し、ベストなケア方法を実行します。

症状 痔の予想タイプ ケア方法
痛み
イボの脱出or肛門外部の腫れ
痔核(いぼ痔) ・お尻を温めて血行を促す。
・シャワーではなく負担の少ない半身浴などで患部を温める。(ぬるま湯が理想)
・入浴できない程の痛みの場合には、下着の上からホットタオルやホッカイロで代用すると良い。
排便時痛
(切れるような痛み)
裂肛(きれ痔)
肛門周囲の熱感.腫脹.痛み
(ズキズキとした痛み)
肛門周囲膿瘍痔ろう ・横になり、患部を冷やす。
・患部が化膿時には、温め厳禁。
病院受診必須。

突然の出血

出血状態は、痔の種類や進行度合いによって異なりますが、大腸がんなどの可能性もありますので、応急処置後は必ず病院受診しましょう。

出血を抑える

突然の出血の場合、お尻をきれいにしたら、下着が汚れないよう、肛門部にキッチンペーパーやコットンなどを当て、「突然の痛みの場合」同様の方法でしばらく横になります。

出血の仕様 痔の予想タイプ ケア方法
拭いた際に血がつく 有痛の場合、裂肛の可能性大
裂肛(きれ痔)
内痔核(初期)
入浴などでおしりをきれいにしたら、
下着が汚れないよう、お尻にキッチンペーパーやコットンなどの柔らかい素材を当てて「突然の痛みの場合」のケア方法同様に安静にする。
便器に血が落ちる 内痔核(やや進行)
勢いよく出血する 内痔核(さらに悪化)
便に血が混じる(黒っぽい血) 内痔核大腸から出血の疑いがある 病院受診必須。

何か出ている

肛門から何か出ている場合、一番に考えられるのは内痔核(いぼ痔)です。排便でいきんだ際などに内側にできたイボが脱出します。通常、痛みは感じないため、脱出物を肛門の中に押し戻します。
※無理に押し込まない

排便後に脱出した場合、肛門をきれいにしたら、便器に座ったまま、指で脱出物をゆっくりと肛門の中に押し戻します。押さえながら立ち上がるとスムーズに押し戻すことができます。 戻りにくい場合は、トイレの温水洗浄便座機能やお風呂の温水シャワーで肛門を温めてから押し戻すと戻りやすくなります。ただし、長時間温水を使用しないように注意してください。それでも戻らない場合は、無理に押し込もうとせず、病院を受診しましょう。直腸が脱出する直腸脱などの可能性もあるため放置せず、病院を受診しましょう。

かゆみがある

便が肛門に付着し炎症を起こし、ジトジトしたかゆみを起こすことがありますし、温水洗浄便座で肛門を洗いすぎたことによりカサカサしたかゆみを起こす場合もあります。 さらに、脱出した痔核が下着でこすれたり、直腸の粘液などでおしりがべたついてかぶれたりすることによるかゆみもあります。これらを総称して「肛門そう痒症」といいます。

激しい痛みのある場合

嵌頓(かんとん)痔核

内痔核は、通常激しい痛みは無いといわれていますが、中には激しい痛みを伴う内痔核もあります。それが嵌頓(かんとん)痔核です。 内痔核が進行すると、歯状線を越えて肛門外に脱出するようになり 痔核が戻らなくなり、血栓ができ大きな腫れ、激しい痛みを伴います。ただちに手術というわけでないのですが、緊急処置が必要なので、早急に病院受診が必要です。

血栓性外痔核

血栓性外痔核は、ある日突然、肛門の周囲に血栓ができて激しい痛みを伴います。すぐに手術を受ける必要はほとんどありませんが、痛みが強い場合や症状が長引く場合は病院を受診する必要があります。

メディカルジャパンでの介入法

痔を発症してしまった場合、早期治療がとても重要です。肛門科など専門の医療機関と並行して、悪化させないためのケアも重要です。便秘や下痢の原因を突き止め、生活習慣や食生活の改善。さらに、排便時の腹圧不足解消 など、患部以外での対策も多々あります。弊社では、そのような多くのケアを一貫して指導、トレーニングしております。

一概に体質改善と言っても、お一人お一人ケアの方法は様々です。鍼治療での内側からのケアが必要なのか?運動不足やストレスなど運動をはじめとしたトレーニング習慣が必要なのか?国家資格者だからこそ判断できる治療とケアのバランスなども適切な調整して行うことが可能です。

見た目やイメージからの憶測、決めつけによるプランではなく、診断機器や測定などを仕様した根拠のある治療、ケア、トレーニングプランであなたの今後の手助けをします。是非一度、ご相談ください。

自律神経診断

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参考文献